「静かな音楽」 つのだたかし
 


  もうずいぶんと長いあいだ、このアルバムを愛聴している。私が「古楽(中世〜ルネサンス時代の音楽)」を聴くようになったのは、学生時代にご指導いただいた、ダンスリー・ルネサンス合奏団のリュート奏者、岡本一郎先生の影響があまりに大である。つのだたかしさんも、キャリアの初期には、岡本先生のもとでリュートを演奏していたようだ。

 つのださんのオリジナル曲M-1「雨のミロンガ」で始まるこのアルバムを手に取ったのは、たぶん世の多くの方と同じく、トマトケチャップのCM曲として使用されていたM-8「シチリアーナ」が気に入ったからなのだが(当然シングルも買いました)、さすがはタブラトゥーラのつのださんのアルバムだけあって、美しいリュートの響きを聴かせる中にも、ついつい最後まで耳を傾けてしまう魅力的な構成となっている。M-13「月とりんご」なんて、想像力を掻き立てられる良いタイトルですよね。

 実は、本作の続編に『時どき静かに』というアルバムがあるのだが、こちらはもう少し「楽しい」色合いを濃い目に打ち出している。なんと私の『時どき静かに』には、つのださんのサインが入っている。ポルトガルギターを手にして間もないころ、私自身まだ目指すところが漠然としたまま、ポルトガルギターを用いた古楽バンドというものを夢想し、現実に活動していた時期があったのだが、実は何を隠そうその頃(2004年)に、つのださん率いるタブラトゥーラと共演させていただいたことがある。その際に、つのださんにサインをお願いしたものだ。ポルトガルギターを立った姿勢で掻き鳴らしたのは、思えばあれが最後だったが(あろうことか、タブラトゥーラの伴奏でソロまで取った)、ポルトガルギターについて、つのださんと言葉を交わすことができたのは実に貴重な経験となったと、今にして思う。







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